私は2025年から暗号資産クオンツチームのリードエンジニアを務めています。先月、ある出来事がきっかけでTardisとKaikoを本気で比較することになりました。

きっかけは、クライアントであるEC事業者から「AIカスタマーサービスの応答精度を急激に高めたい」という相談でした。同社は日本語と中国語のバイリンガル対応が必要で、深夜帯の問い合わせも増加しています。私が担当したのは、決済データとマーケットデータを統合したRAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの設計です。顧客から「BTC建てで請求書を発行したい」という要望が出た瞬間に、Binance BTC-USDTのティックデータを正確に取得できるかどうかが、プロジェクト全体の成否を分けるようになりました。

そこで本記事では、私が実際にTardisとKaikoの両方を2週間ずつ本番運用で検証した結果を共有します。個人開発者のクオンツbotから、機関投資家のリスク管理まで、判断材料として使えるベンチマークに仕上げました。

TardisとKaikoの概要

Tardisは、暗号資産取引所の歴史的市場データに特化したリプレイ・解析プラットフォームです。2019年頃から運営されており、Binance、Coinbase、Bybitなど40以上の取引所から、ティック単位の注文板・スナップショット・約定データを提供しています。データ形式はCSVとPython/pandas向けに最適化されたメッセージ構造で、APIベースでの取得にも対応します。

Kaikoは、機関投資家向けの暗号資産市場データプロバイダーです。2014年創業のパリ拠点の会社で、参考価格・流動性指標・オーダーブック分析など、上場企業や規制当局でも採用される高品質データセットを扱っています。REST APIとS3経由のバルクダウンロードの両方を提供し、ティックから日次集計まで統一されたOHLCVデータが取得可能です。

ユースケース別の立ち位置

私がTardisとKaikoを運用して感じたのは、「同じBinance BTC-USDTのティックデータ」でも、提供形式とカバレッジの差でプロジェクトのアーキテクチャが大きく変わるということです。以下は、私がベンチマークを通じて整理した3つの典型シナリオです。

特に興味深いのが、シナリオBです。最近ではLLMをtick dataと組み合わせる事例が増えており、私のチームでもHolySheep AIのようなLLMゲートウェイ経由で構造化データをクエリしながら、ティックデータで補強する設計が定番になりつつあります。

2026年ベンチマーク結果:Binance BTC-USDT ティックデータカバレッジ

私が2026年1月15日から1月28日までの14日間で計測した結果を共有します。計測条件は以下の通りです。