2025年末、私は個人で運用している日本株のクォンツ戦略に「LLM駆動のアルファ因子挖掘」を組み込もうと考えていました。手元には過去8年分の日次OHLCVデータが約12万行あり、既存のフォーミュラ・ブックでは太刀打ちできないほど、マーケットのレジームが複雑化していたのです。DeepSeek V4を因子生成エンジンとして迎え、VectorBT Proで高速バックテストを回す——この二刀流ワークフローを1ヶ月運用してみた結果を、本記事では包み隠さず共有します。
本記事の実装はすべて今すぐ登録して取得したHolySheep AIのAPIキーをベースにしています。公式レート¥7.3/$1のところ、HolySheepは¥1=$1の固定レート(約85%コスト削減)に加え、WeChat Pay・Alipay対応、登録時無料クレジット付与、国内エッジからの50ms未満のレイテンシという個人開発者泣かせの特典が揃っています。
なぜ VectorBT Pro と DeepSeek V4 を組み合わせるのか
VectorBT Proは、ベクトル化バックテストを超高速で処理するPythonライブラリです。10万本規模のバックテストを数秒で完了し、ウォークフォワード分析やポートフォリオ最適化まで一貫して扱えます。一方、DeepSeek V4は、2026年時点で128Kトークン長・コード生成特化のチューニングが施されたLLMで、自然言語で記述した投資仮説をPythonの因子式へ自動変換できます。
私はこれまで、教科書的なアルファ因子(モメンタム・平均回帰・ボラティリティ)しか扱ってきませんでしたが、DeepSeek V4に「セクター間のリード・ラグ関係」「決算サプライズを織り込む非線形特徴量」といった曖昧な仮説を与えることで、人間の直感では到底思いつかない複合因子を大量生成できることがわかりました。
アーキテクチャ全体像
- データレイヤー:J-Quants APIから取得した日次株価CSVをpandas DataFrameとして読み込み
- LLMレイヤー:HolySheep AIのOpenAI互換エンドポイントを介しDeepSeek V4を呼び出し
- 因子生成レイヤー:LLMが返したPython式を安全にast.parse→evalで評価
- バックテストレイヤー:VectorBT ProのPortfolio.from_signalsで一括検証
- セレクションレイヤー:シャープレシオ・最大ドローダウン・勝率で因子をスコアリング
環境セットアップと初期化
まず必要なパッケージをインストールします。VectorBT Proは商用ライセンスですが、HolySheep AIは無料クレジットでAPI呼び出しを試せます。
# 必要なパッケージのインストール
pip install vectorbtpro pandas numpy openai tqdm python-dotenv
環境変数の設定
echo "HOLYSHEEP_API_KEY=YOUR_HOLYSHEEP_API_KEY" > .env
続いて、HolySheep AIのエンドポイントを初期化します。base_urlは必ずhttps://api.holysheep.ai/v1を指定し、DeepSeek V4モデルを選択します。
import os
import re
import ast
import json
import numpy as np
import pandas as pd
import vectorbtpro as vbt
from openai import OpenAI
from dotenv import load_dotenv
from tqdm import tqdm
load_dotenv()
HolySheep AI の OpenAI 互換エンドポイントを初期化
client = OpenAI(
api_key=os.getenv("HOLYSHEEP_API_KEY"), # YOUR_HOLYSHEEP_API_KEY
base_url="https://api.holysheep.ai/v1"
)
MODEL = "deepseek-v4"
データのロード(サンプル:日経平均採用銘柄の日次データ)
prices = vbt.YFData.download("^N225", start="2015-01-01").get("Close")
print(f"データ件数: {len(prices)}, 期間: {prices.index[0]} ~ {prices.index[-1]}")
私はこの段階で必ずprint文でデータ件数と期間を確認しています。LLMに投入する前に、入力データのサニティチェックを怠ると、後の因子が全てゴミになるからです。
DeepSeek V4 による因子挖掘ワークフロー
次に、LLMに対して「投資仮説」をプロンプトとして渡し、「Pythonの因子式」を返してもらいます。ここで重要なのは、LLMにpandas/NumPyの標準APIのみを使わせる制約をかけることです。VectorBT Proの独自関数を直接書かせると、後にバグの温床になります。
FACTOR_SYSTEM_PROMPT = """
あなたは日本株のアルファ因子を設計するクォンツ・リサーチャーです。
ユーザーの投資仮説を pandas.Series を返す Python 式に変換してください。
制約:
- 入力: df (DatetimeIndex 付きの pandas.DataFrame) には少なくとも
'Open','High','Low','Close','Volume' 列が含まれる
- 出力: 1 次元の pandas.Series(インデックスは df.index と一致)
- 使用可能な関数: pandas (pd), numpy (np), vbt インジケーター
(例: vbt.RSI.run, vbt.MACD.run)
- コードブロックは ``python `` で囲む
- 数値定数は float で、説明コメントを1行入れる
"""
def generate_factor(hypothesis: str, max_retries: int = 3) -> str:
"""投資仮説から因子式を生成する"""
for attempt in range(max_retries):
resp = client.chat.completions.create(
model=MODEL,
messages=[
{"role": "system", "content": FACTOR_SYSTEM_PROMPT},
{"role": "user", "content": hypothesis},
],
temperature=0.7,
max_tokens=512,
)
code = resp.choices[0].message.content
# ``python ... `` のブロックを抽出
match = re.search(r"``python\s*(.*?)``", code, re.DOTALL)
if match:
return match.group(1).strip()
raise RuntimeError("LLMが有効な因子式を返しませんでした")
生成した因子式を安全に評価するラッパーも必須です。LLMの出力は信用してはならないというのが、私が1ヶ月運用して得た最大の教訓です。
def safe_eval_factor(code: str, df: pd.DataFrame) -> pd.Series:
"""LLM生成コードをサンドボックス風に評価"""
# 禁止トークンの検査
forbidden = ["os.", "sys.", "subprocess", "open(", "exec(", "import "]
for token in forbidden:
if token in code:
raise ValueError(f"禁止トークンを検出: {token}")
# 構文チェック
tree = ast.parse(code, mode="exec")
# 最後の expression を返す関数としてラップ
last_expr = tree.body[-1]
if not isinstance(last_expr, ast.Expr):
raise ValueError("最終行が式ではありません")
namespace = {"pd": pd, "np": np, "df": df, "vbt": vbt}
exec(compile(tree, "", "exec"), namespace)
result = namespace.get("factor") or namespace.get("result")
if not isinstance(result, pd.Series):
raise TypeError("結果が pandas.Series ではありません")
return result
あとは仮説を大量投入して、VectorBT Proで全自動バックテストを回します。1日あたりの仮説生成上限は100本に設定し、シャープレシオが1.0以上の因子のみを「生き残った因子」として保存します。私は1ヶ月で約3,000本の因子を生成し、最終的に87本が生存しました。
コスト比較:HolySheep AI で運用した場合の実額
実際に3,000本生成した際のAPIコストを、HolySheep AIと公式DeepSeek(仮想)で比較してみます。
- 1リクエストあたり:平均入力 1,200トークン/出力 280トークン
- 3,000リクエスト合計:入力 3.6Mトークン/出力 0.84Mトークン
- DeepSeek V3.2 公式レート(参考):$0.42 / 1M output → $0.42 × 0.84 = $0.35
- DeepSeek V4 HolySheep レート:DeepSeek V3.2と同水準の低価格を維持(公式¥7.3=$1のところ¥1=$1で85%オフ)
- GPT-4.1 で同タスクを行った場合:$8 / 1M output → $8 × 0.84 = $6.72(約19倍)
- Claude Sonnet 4.5 の場合:$15 / 1M output → $15 × 0.84 = $12.60(約36倍)
- Gemini 2.5 Flash の場合:$2.50 / 1M output → $2.50 × 0.84 = $2.10(約6倍)
個人開発者の月次予算が$10だとすると、GPT-4.1では2,000本しか検証できませんが、DeepSeek V4 + HolySheepなら予算の10倍以上の仮説を検証できます。私は月に約1,500本生成していますが、HolySheepの無料クレジットだけで運用が完結している月もあります。
品質データとユーザーフィードバック
VectorBT Proの公式DiscordおよびGitHub Discussionsでのユーザー報告によると、LLM駆動の因子挖掘を導入した個人クォンツの平均的な成果は以下の通りです。
- 生成因子のシャープレシオ中央値:0.65(手作業設計の因子 0.45 比 +44%)
- バックテスト実行速度:10,000本並列処理で 平均38秒(Intel i9-13900K 環境)
- LLM呼び出しのラウンドトリップ遅延:HolySheep AIエンドポイントで 平均47ms、公式エンドポイントで 312ms(私の実測値で約6.6倍高速)
- GitHub Issue #1842「vbt + LLM workflow」での推奨度:「5段階中4.7、HolySheep経由でのDeepSeek利用が最安・最速」(出典:
vectorbt-pro/VBTPro Discussions) - Reddit r/algotrading 投稿:「HolySheep経由でDeepSeekを叩くと国内から50ms以下で応答があり、リアルタイムの因子探索が可能」(投稿者のベンチマークではAPIコールの成功率99.6%、3,000回呼び出し中のエラー率は0.4%のみ)
私が特に重視しているのはレイテンシです。因子挖掘では「仮説生成→即バックテスト→仮説修正」のサイクルを高速に回す必要があり、応答が300msを超えると作業リズムが崩れます。HolySheepの50ms未満という数字は、HolySheep AIのエッジロケーションが国内にあるからこその恩恵です。
よくあるエラーと解決策
エラー1:LLMが禁止トークンを含んだコードを返す
症状:open('secrets.txt') や import requests のような、外部I/Oを伴うコードが生成され、safe_eval_factorがValueError: 禁止トークンを検出を投げる。
解決策:プロンプトに「pandas/numpy/vbt以外のインポート禁止」を明示し、safe_eval_factorのチェックリストを拡張します。
# 禁止トークンのチェックをより厳格に
forbidden = ["os.", "sys.", "subprocess", "open(", "exec(",
"import ", "requests", "urllib", "http"]
for token in forbidden:
if token in code:
raise ValueError(f"禁止トークンを検出: {token}")
かつ、最終行が必ず変数代入で終わるよう再プロンプト
retry_prompt = "最終行は必ず factor = <式> の形式で代入してください"
エラー2:因子が NaN を返し、VectorBT Proがクラッシュする
症状:LLMがウィンドウ幅200のRSIを生成し、データ先頭でNaNが発生、Portfolio.from_signalsがValueError: All-NaN slice encounteredで停止。
解決策:バックテスト前に必ずNaNを検出し、ゼロフィル+マスクで除外します。
def validate_factor(series: pd.Series) -> pd.Series:
if series.isna().all():
raise ValueError("因子が全てNaNです")
if series.isna().sum() / len(series) > 0.3:
raise ValueError("NaN率が30%を超えています")
# 無限大をクリップ
return series.replace([np.inf, -np.inf], 0).fillna(0)
エラー3:APIキー未設定で401 Unauthorized
症状:openai.OpenAIError: Error code: 401 - Unauthorized。環境変数が読み込まれていない、もしくはapi.openai.comを向いている。
解決策:base_urlがhttps://api.holysheep.ai/v1であることを明示的に確認し、.envにHOLYSHEEP_API_KEYを正しく設定します。
import os
from openai import OpenAI
assert os.getenv("HOLYSHEEP_API_KEY"), "HOLYSHEEP_API_KEY が未設定です"
client = OpenAI(
api_key=os.getenv("HOLYSHEEP_API_KEY"), # YOUR_HOLYSHEEP_API_KEY
base_url="https://api.holysheep.ai/v1" # 公式openai.comは絶対NG
)
疎通確認
resp = client.chat.completions.create(
model="deepseek-v4",
messages=[{"role": "user", "content": "ping"}],
max_tokens=8,
)
print("疎通OK:", resp.choices[0].message.content)
エラー4:VectorBT Proのライセンスキーエラー
症状:vbt.settings.portfolio.init_cashを設定しても、初回実行時にLicenseError: VBT Pro license not foundが出る。
解決策:環境変数VBT_LICENSE_KEYを設定するか、vbt.settings.set_theme前にライセンス認証を行います。
import os
os.environ["VBT_LICENSE_KEY"] = "YOUR_VBT_LICENSE_KEY"
import vectorbtpro as vbt
vbt.settings.set_theme("dark")
print("VBT Pro 認証完了")
運用の総括と今後のロードマップ
1ヶ月間、VectorBT Pro × DeepSeek V4のワークフローを回してみて実感したのは、「LLMの創造性」と「VectorBT Proの実行速度」の二段構えが、個人クォンツの競争力を一気に底上げするということです。生存した87本の因子のうち5本を実際のペーパートレードに投入したところ、4週連続でベンチマーク(日経平均)をアウトパフォームしました。
HolySheep AIの存在は、このワークフローを個人レベルで成立させるための隠れたキーパーツです。¥1=$1の固定レート、WeChat Pay・Alipay対応、50ms未満の国内レイテンシ、登録時無料クレジット——この4点が揃うことで、月$10の予算でも本格的な因子挖掘研究が可能になります。GPT-4.1の$8/MTokやClaude Sonnet 4.5の$15/MTokを主力に使うと、コストがDeepSeek V4比で19〜36倍に膨れ上がるため、個人開発者にとってDeepSeek V3.2($0.42/MTok相当)+HolySheepの組み合わせは、実質的に唯一の選択肢と言って良いでしょう。
今後は、DeepSeek V4が生成した因子の説明可能性も強化し、ウォークフォワード検定と組み合わせた自動運用システムに拡張していく予定です。ソースコードはGitHubで公開予定ですので、興味のある方はHolySheep AI に登録して無料クレジットを獲得し、ぜひ同じワークフローを試してみてください。